私は泣くのだ
さみしいとき、わたしは鳴くようにしている。ヤン!ヤンッ!これはわたしのさみしい時の鳴き声。目をつぶって真っ暗、大きくて薄いブランケットの中、息苦しくなって、寝るんだ!と、目を閉じる。部屋の明かりはつけたまま。ふわふわ体から体が抜け出してデジャブより鮮明にわたしはいつもの病院で血圧を測る機械の穴に手を突っ込んで、やん!やん!やん!やん!やん!やん!やん!やん!って。そしたら、どうしたのって、看護師さんが今はいないわたしのおばあちゃんで、やさしそうにわたしを見てくれた。健やかな息。わたし、眠ってるんだ。夢見てるんだ。ふわふわして、このまんまずっと眠ってるんだ。で、わたしは泣くのだ。
小さな太陽
水着を捨てた。どうして。秋の衣替え。何を間違ったんだろう。ボンヤリしてたからなあ。ビー玉とビーズ。見えるものが大きくなったり、小さくなったり。アリス症候群。わたしはいつから右に傾いたり、突然眠くなったり。物凄く大きな河が小さなわたしを飲み込む。あの夏の日を捨てた。太陽の下で泣いた。珍しいからたくさんの人が心配して近寄って来たが怖くて。怖くて。逃げたのは青い、青い海、海にわたしは逃げて、人魚の水着を着せられて泳いだ。夏から離れて海の中で真っ赤な秋を見つけた。ワタシは真っ赤だ。一人の小さな太陽だ。傷ついても、疲れ果てても、私はゆっくり泳ぐ。ぼんやりしても、アリス症候群でも、人魚でも。今夜わたしは水着を、あの夏の人魚と別れた。何だかすっきりして爽やか。
鏡
あなたはわたし。分かっている。近づきたいのに離れてばかり。磁石だね。真顔でそう言ってた。黒い雪が降ってきたときわたしは何か言ったけどあなたは全く無視だった。自然環境はよほど最悪で、もう白い雪は見ることが出来ないのかな。あなたは前を見ている。わたしが泣くとあなたも泣く。男のくせに泣くなよとわたしが言うと、あなたは、ただ、お前だって泣くなよ。女とか男とか何だろう。あなたの嫌なところ全部わたしも持っている。時々、二人で踊りながら並木道をいちゃいちゃ歩いたね。あのときは、わたし、楽しかった。思い切り笑った。あなたも。つまり、わたしたちは鏡。だから、喧嘩が多くて、すれ違い。今夜も雪。夜に見る雪は白かった。今夜はわたしは気分が落ち着いている。鏡。わたしが映るあなたは鏡。だから今夜はふたりゆっくり話したい。